2008.02.07

『量から質の医療への転換』に思う

01実態が余りに悲惨な状況に至っているのか。或いは、メディアが集中して報道するからなのか。おそらくその両方とも関係し合ってであろうが、国民の医療に対する不信感と先行きについての不安感はピークに達している観がある。

そこで、何が国民の医療に対する不安であり不満なのか。
医療の専門家や医療行政、医療経済から見たときの問題点は何なのか。
これらを探っていくと、複雑なねじれ状況が浮かび上がってくる。

国民の不安は、奈良の妊婦たらい回し事件に見られるような、産科、小児科の医師不足。地方の病院での相次ぐ、閉院や病棟閉鎖。高齢者にとっては病気やけがをして入院してもすぐに退院させられる。今後療養病床が減って要介護老人を誰が見てくれるのか。そこに映し出されているのは、医師の不足と医療費抑制によって必要な医療が受けられない、医療難民になるのではという量的な面での不満や不安だ。

一方、政府や医療行政の専門家は、日本の医療は、量から質へ転換せねばならないと考えているようである。
日本の医療は、先進諸外国に比べて、ベッド数はずば抜けて多く、医療機器等の設備も進んでいる。その反面、医者や看護師の人口当たりの数は、お粗末なのが現状である。
医療は今後も益々、進歩し、高度化していく。であるから、患者1人当たりの医師やコメディカルを充実させ、特に急性期患者に適切な治療を短期間に集中して施さねばならない。

いつもお定まりの話になるが、日本は国全体が財政難に陥り、あたかもサラ金地獄的な状況に喘いでいる。加えて、益々の少子高齢化である。
こんな想定は何の意味も無いが、もし日本が中東の産油国のようにオイルダラーで潤っていたなら、世界最先端の医療をいつでもどれだけでも国民全員に、しかも無償で提供することができるかもしれない。
しかし、現実は全く逆である。
それでなくとも今後増え続けるであろう医療費の伸びを、どうにかして抑制しながら
疾病に関しては、貧富の差無く国民に等しく医療を提供する。
 その為には、お金を選択と集中の原則で注がなければならない。

国が国民の罹る病気に全て責任を持つとしたら、それは際限の無い仕事であろう
お金も無尽蔵に必要となる。
そこで、一つは、治さなくてはならない病気を治す。
治し方も、病院や医師によってお金も時間もバラバラでは良くないので、治療方法を標準化して、其の範囲でやってもらうようにする。
そして、高齢者の生活習慣病は、完治しない場合がほとんどであるから、病院の長期入院ではなく、在宅(自宅もしくは自宅に準ずる所)で療養し、余り積極的な医療は施さない。
さらにこれからは、今まで行政が直接的には関わらなかった病気に罹る前の医療、すなわち、予防医療に積極的に乗り出そうとしている。
国民に対して普段から病気に罹らないような保健指導を進め、健康維持を啓蒙実践していこうというのである。

ということで、医療の素人である国民が量的な満足を今だ求めている一方で、行政と専門家は量から質に転換しようとしている。
こうした齟齬をどのように解消していくのか。甚だ難しい課題である。

医療は複雑な要件のせめぎ合いで意思決定される世界であるから、単に金銭的な問題だけではない。
しかし、今後国民は、負担は少ないが我慢を余儀なくされるのか、量・質共に安心できるレベルの医療を今より高負担で維持していくのか。その選択に迫られることになる。
負担はしないが満足いくだけの医療を要求し、満たされなければ不満をいうという話はアラブの国の夢物語なのである。

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2007.11.10

小泉改革の振り戻しが今後医療・介護政策にどう影響するか?

○ 規制強化と予算削減に終わった小泉改革
小泉政権の構造改革は、我が国の絶望的な財政事情を考えれば、必要な手立てであったと今でも思います。
少ない予算で、できるだけ成果を上げるためには、規制を緩和し、市場原理を導入して費用効率を上げ、その必要条件として、聖域にもメスを入れて、無駄をなくすように努める。

しかし,一時はあれ程国民に支持された、この小泉改革がここに来てすこぶる不評のようです。
全ての分野が自由経済に馴染むかどうかという深い議論は横においたとして、問題の大きな所は、「財政再建=無駄をカット」という車輪と「自由主義=規制緩和、民間の参入と創意工夫が生きるような環境づくり」という車輪が両輪回ってはじめてバランスよく前に進むものが、結局、予算カットと実質規制の強化に終わってしまっていることです。

この点は、医療や介護の分野でもはっきり言えます。
適正化と称して、報酬が削減されただけで、実質の規制緩和も自由化もまったく進んでいません。
どどのつまり、以前に増して行政の一挙手一投足に振り回される、官主導、官統制のシステムが出来上がってしまったということです。

その結果については、国民が周知するところとなりました。
医療で言えば、医師不足特に産科・小児科・麻酔科医師の不足は危機的です。
又、地方では病院或いは病棟の閉鎖が相次いでいます。
介護の現場では、介護職が集まらない、離職率も高い。事業者も経営の悪化で
廃業を余儀なくされる所が増加している。
年金問題と並んで医療・介護難民が続出する危険性は、看過できない大変な社会問題になっています。

○ 来年度以降の医療・介護制度改正
7月の参院選以降、小泉改革への不満が至る所で噴出しているようですが、福田政権になってからは、随所に振り戻しの兆しが見えてきたようです。
医療・介護も含めて、これ程社会保障を置き去りに、又、個人間及び地域間格差を野放しにしたままでは、政府与党も次の選挙では闘えないでしょう。
来年度の診療報酬改定については厚労省の発表を待たなければなりませんが、
ここ数年間、一気呵成に来た医療費の削減は、全体的に見ると一服するのではないかと予想されます。
また、来年4月から開始される高齢者医療制度の運営や2011年末と期限の切られた療養型病床の削減が、当初の厚労省の目論見の通り機械的に進むかどうか疑問視する意見も出てきています。

中期的には、療養病床を削減して老人保健施設や居住系へ移転することや、急性期病院、そして一般病院を整理合理化する流れは進むと考えます。
しかしながら、医療体制全体や地域医療システムが混乱する危険性を考慮するとそのスピードも穏やかにならざるを得ません。

来年度以降に向けての力点は、高齢者がどうの様な医療・介護ケアを受けられるようになるのか。特に在宅医療を軸にしてどのような地域内連携システムをデザインし、かつ、機能させていくことができるのかにあります。
これを、いわゆる、経済的誘導(診療報酬の加減)で実現できるような制度改正・診療報酬改定が盛り込まれるものと予測します。

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2007.09.13

肥満も国に管理される時代へ

Fat01_2肥満は今や日常語になった『メタボリックシンドローム』の元凶ですが、来年4月から40歳~74歳までのメタボリックの人は、健康保険での保健指導の対象になります。

『特定健診・特定保健指導』と呼ばれるこの制度は、厚労省が生活習慣病を発病する前に予防し、治療にかかる医療費を減らそうとして考え出したものです。


健康保険組合などの保険者は、被保険者と被扶養者の健康診断をして、その結果に問題のある人には、保健指導をすることが義務付けられます。
今までは、健診してその結果を説明するだけでよかったのですが、これからは、リスクの高い人を分類して専門的な指導を3ヶ月以上に亘って提供しなければいけません。
指導は、医師等の専門家によって、食事の制限や運動、喫煙の管理など生活全般に渡って行われることになります。


ただ、現時点ではまだ問題がいろいろ指摘されています。
検査結果を元にリスクに応じて受診者を3つに分類すること。指導対象者には、面談、電話、メールでアドバイスを提供し続けること。こうした手間のかかる作業を5600万人といわれる人数に徹底できるのか。
そしてまた、診断の判断基準もまだ十分に統一されていないようですし、コストについての不確定な部分も残っています。


ただ、専門的なことは別にして、今回の制度は、中高齢者に対しては予防医療が中心の座を占め始めたという点では革新的です。


Fat02_2これまであなたの肥満や不摂生な生活は、あくまで個人事でありましたが、これからは、国の積極的な係わりと管理の下に置かれる国家プロジェクトの対象事項になるのです。


『特定健診・特定保健指導』の詳細について知りたい方は、私の知人で専門医であります、一幡クリニックの馬場院長にご相談下さい。
>>一幡クリニックホームページはこちら


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2007.07.21

医療・介護事業分野に自由化は来るのか?

年金問題が毎日かまびすしい程に議論されていますが、年金と合わせて老後を守る要として忘れてならないのが医療と介護です。

今、日本の医療や介護は大きな曲がり角に来ています。
少子高齢化と財政悪化を考えると、社会保障費も切り詰めざるを得ないという財政・構造改革の流れで、医療機関や介護事業者が受取る報酬も含めた制度の改正がここ数年立て続けに行われてきました。

国が財政的に生き残り、孫子(まごこ)の代に健全な国家社会を受け継がせるには、聖域なき改革は不可欠なのでしょう。そして、皮肉なことに、実際に揺さぶってみたら、聖域とされた部門とそれを監督し統制してきた行政に、永年に亘ってゆがみと不正が温存され、おびただしい量の膿が溜まっていることがわかってしまいました。

こうなれば、「やっぱり特別扱いせずにキッチリやってもらわなければ。」と国民誰もが思っても無理はありません。
今後も、市場原理や国民本位(消費者主義)の流れは変わらないと予想できます。

しかし、私は、これまでの医療・介護制度改正について2つの問題がクリアされないままで来ていることに気掛かりを覚えます。

それは第一に、「医療や介護にどこまでの経済性を要求するのか」という点について、しっかりしたコンセンサスが見当たらないこと。
そして、もう一つが、「今後経済的に政府が負担できなくなる割合が増えるとしたら、コアの部分(医療・介護の中心的な部分)を除いては、段階的に自由化が進んでいくのかどうか」ということです。

ここ10年近く、2つの見方が議論されてきました。「医療・介護は財政的に逼迫して、保険でカバーできる領域が狭まり、自費を前提にした自由診療や介護の割合が高まる」というものと、「いや、日本の皆保険制度は世界に冠たるものだから、これは守り通さなければいけないし、行政もいろいろ言っていても、引き締めを緩めて守り切るだろう」という見方でした。

後者は、官僚主導の体制は一朝一夕には改まらないという官民馴れ合いの図式を踏まえての考えだったと思います。
ところが、現実には、ここに来て、どうもこのどちらにもならないのではないかという危惧が生まれてきました。
すなわち、保険制度でみる範囲も狭めるが、それでいて民間に任せた自由化もそれに必要な規制緩和も進めない。むしろ、規制と監査だけは厳しくしようという方向性です。

 「民間に任せると、医療や介護の分野で大儲けする連中が出てくるからけしからん」という思い込みが、国民の中にも根強くあります。
結局、行政は、金は出さないで監督官庁としての権限だけを強化する方向に向かい、大きな目でみたら、かえって将来を混沌とさせる要因になっています。

一日も早く、これからの医療介護は、誰がどれだけの負担をして、どこまで追い求めるのか(どこまでのサービスが必要かつ十分なのか)を決めないと、社会不安或いは崩壊が急速に進んでいくように思えるのです。

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2005.12.22

「医療・福祉研究部会」を発足させます!!
関西ベンチャー学会

 21世紀は人の時代です。
 『地球上の全ての人類が基本的人権を守られ、最低限度人間らしい生活を営めること、又、その為にも戦争や飢餓・貧困を撲滅すること。』の実現が問われる世紀です。
 人権が蹂躙され続けた20世紀に比して、ヒューマニズムの理解と浸透が加速する世紀であることを期待します。
 
 さて、上記の理念を具現する中心分野として、これからの医療や介護を含めたヒューマンケアには衆目が集まっています。
 発展途上国においては、貧困による栄養不良、感染症の蔓延など、急性期医療や公衆衛生の重要性は増すでしょう。反面、先進諸国では、高齢化に伴い、慢性期の医療と併せて高度先端医療へのニーズが今後急速に高まると予想されます。
 医療以外でも発展途上国では、不当な人権抑圧や暴力への対応。生活習慣や家庭崩壊に対しての指導やカウンセリング。などの充実が求められるでしょうし、先進国では、QOL(生活の質)の向上やメンタルケア、又個人のニーズに適った多様な医療・介護が求められます。


 この度、私が以前より属している『関西ベンチャー学会』に医療や介護、福祉を研究する部会を立て上げることになりました。正式名は『医療・福祉研究部会』です。
 医療と介護を含む福祉について、政策研究からはじまって、バイオテクノロジーとベンチャービジネスとの関連、医療機関・介護事業の経営、新しいビジネスモデルや新サービスの研究等々、理論と実践の両面からアプローチしていければと考えています。
 ご興味をお持ちの方は、どなたでもご参加いただけます。
 また、関西ベンチャー学会も広く門戸を開いています。

 詳細を知りたい方、興味をお持ちの方は、是非お問い合わせください。

>>お問い合わせはこちらからお願いします:002-001

>>関西ベンチャー学会HPはこちら

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2005.12.15

医療、大学はどちらも構造不況業種?!

051116_1衆議院選に大勝した小泉内閣は、いよいよ構造改革を加速しようとしています。
改革メニューが見えてくるに従って、国民からすると医療や介護などの公的サービスのレベルがどんどん低下していき、反対に、増税メニューが目白押しという改革の実態に悲鳴を上げたくなる思いです。

それでも国の財政状況がここまで来てしまえば、低福祉高負担の「変則型小さな政府」を容認するしか道がないでしょう。先の選挙でも、国民はそこらのことを悟り、小泉政権を支持しました(おそらく)。

国民=生活者・消費者側という観点でいくと、ツケを押し付けられる割に、供給サイドは未だヌクヌクと良い思いをしているのではという猜疑心にかられてしまいます。
特に、マスコミがこぞって取り上げる、社会保険庁や道路公団、或いは大阪市等の公金の無駄遣い報道などは、その思いに拍車を掛けます。

ところが、いい思いをしているのではと一般の国民の多くが思っている公の組織の中にも、実際には構造的に大きな問題を抱え、喘いでいるものがたくさんあります。
そして、その典型例が大学機構と医療機関のようです。

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2005.09.05

人口減少がもう始まった!!

SS181来年以降かと思われていた、日本の人口減少が今年既に始まっているという報道がありました。
今回の人口減少局面は、出生率が余程改善しない限り今世紀末まで続き、2100年には6000万人になるという予測も出ています。
 
個人的には、人口減少は長期的な予測として指摘されていたのに、なぜ今頃になって、年金問題・医療介護問題等を巻き込みながら大騒ぎをしているのか釈然としませんでした。
人間(特に日本人)は切羽詰まらないとお尻に火が付かない動物だと簡単に考えればよいのでしょうか?
それとも、もう少し突っ込んで、政治的意図や配慮、或いはカモフラージュがあるのではと深読みすべきなのでしょうか?

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2005.07.09

団塊の世代は退職後自分達の為にお金を使う?!

dankai012007年以降、団塊の世代が順次退職していくという、いわゆる「2007年問題」が目前に迫ってきています。
それはそれで社会全体にとって重い課題ですが、リタイアしていく人たちはその後どのようなライフスタイルを期待し、設計しているのでしょうか?

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2005.06.04

パラサイトシングル・ライフは終焉に向かうか?!

「一億総中流」と囃された時から十数年を経て、社会経済構造の変化で明らかに我が国にもある種の「ヒエラルキー(社会階層)」が形成されつつあります。
もっとも、「一億総中流」と言っていた時でも、「ヒエラルキー」は厳然として存在していたのでしょうが、メディア等がそう囃し立てるので世の中皆中流だと、今から思えば幸せな平等感に浸っていることができました。

日本は資本主義陣営ですから、私有財産は認められ、合法ならば何でどれだけ儲けようが自由です。
また、税金さえ払えばいくら蓄財しても、財産を誰にあげようがこれも自由のはずです。

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2005.05.02

これからの医療・介護の制度改革を考える

来年の後半から日本の人口は減少局面に入り、21世紀の終わりには今の半分になるという予測が立っています。高齢化と人口減少が重なると、年金問題と併せて、必ず医療・介護制度が切実な話題になります。

実際、厚労省は、財政難と高齢化による医療費増大に対して抜本的な医療改革を検討しています。
介護保険制度も、一般の国民には分かりにくいのですが、それ自体で独立した制度のように見えても、実は医療制度の中にしっかり位置付けられています。
今後は一人の人間が生まれて死ぬまでの医療ケア・介護ケアの経緯を踏まえた統合的なシステムを制度改革の前提にしていくことでしょう。

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