第85話 森繁 久弥 VS.植木 等
先日、駅前のレンタルビデオ店で棚を見て回っていたら、面白い映画に出くわしました。クレージーキャッツの『香港クレージー作戦』……。
昭和38年頃、おそらくまだ7歳くらいだった私を、何を思ったのか父は映画館に連れて行きました。その時の映画が『香港クレージー作戦』。
今覚えているのは、映画館は人で一杯で、皆が最初から最後まで大笑いしていたことでした。しかし、主役達がどういう理由で香港に行ったのかはまるで分かりませんでした。
それでも、子供心にドタバタギャクが可笑しく、外国の様子にも心を弾ませた記憶があります。そして、観客皆が前向きな明るい笑いと雰囲気に包まれていた印象も新鮮に残っています。
ところで、クレージーの海外ロケ物に味をしめて、他には無いかと探すとありました!森繁久弥の社長シリーズ。同じ昭和38年製作で、当時は憧れの地であったハワイでの現地ロケを敢行した『社長外遊記』。森繁久弥の社長シリーズの1本。
内容は、クレージーの映画と同じく、びっくりする程お気楽で無責任。
大手百貨店の社長森繁久弥は、ビジネスには真剣ではあるが、仕事時間をほとんど浮気相手と夜の接待に費やしています。
驚くべきことに、経営者(社長以下同じ様な行動パターン)がそんな状態でも会社の業績は上がり続け、気に掛かるのはライバル企業との売上高競争だけというのんきさ。
相手が香港出店を決めたと聞くと、自分のところも対抗上ハワイ進出といった具合に話は進んでいきます。
クレージーキャッツの植木等は、サラリーマンを代表し、無責任だが豪放磊落で出世を重ねていきます。その上、美女にもてる役回り。かたや、森繁久弥は、どう見ても能力は無いが、婿養子として先代の後を継いだ社長(この映画ではそこの経緯は定かではない)。
同時期に大ヒットしたシリーズですが、視点はどちらも庶民に置かれています。
今、映画だけを見て当時を想像すると、何とも気楽で良い時代と呆れる様な羨ましいような思いに駆られます。
しかし、現実は高度成長、管理社会が進展する中で、気分転換、ガス抜き的な娯楽が必要だったのでしょう。
内容も、荒唐無稽のようでいて、今も変わらない真理が見え隠れします。
ただ、今と大きく違うのは、不安や不満があっても国民皆が前を向いて夢を追っかけていた姿です。
夢はいつでもいくつになっても見ることが出来るのにと思いながらも、後期高齢者という表現と同じ様に、折角見ようとする夢の芽も次々摘んでしまう。
観終えてそんな現在の社会状況が浮き彫りにされたような気がします。
まあ、難しく考えないで、気分転換するには両シリーズともお奨めですよ!
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