第73話 日本社会の致命的欠陥
先日NHKスペシャルの「学徒兵 許されざる帰還 ~陸軍特攻隊の悲劇~」を見ました。
先の戦争体験者が減りつつある今日、改めて、戦争の愚かしさと、日本帝国軍の内実のお粗末さと非情さが浮き彫りにされた放送でした。
私は、戦争を経験していない年代ですが、親や親戚から聞かされてきた話によって、戦時中の生活や軍隊というものを想像してきました。
しかし、今回の放送が映し出しものは、それに何重にも輪をかける程ひどいものでした。
戦争の悲惨さや不合理さは小さいときから散々聞かされて来ましたから、まだ少しは理解できます。しかしながら、昔の日本人は軍人も一般国民も「日本」という国の為に一丸となって戦っていたと思っていました。
それが、必ずしもそうではないことを知らされたのです。
海軍の特攻隊に対抗心を燃やした陸軍は、学徒出陣で送り込まれてきた若者を特攻兵に急場ごしらえで仕立て、廃物に近い状態の飛行機に乗せて敵艦に突入させました。
そして、一方で彼らを「軍神」と呼んで国民の戦意高揚のプロパガンダに利用しました。
しかし、戦後、調査すると実は、半分近くの特攻兵が、飛行機の故障等で不時着し、基地に帰還していたのです。
「軍神」は、全員華々しくお国の為に玉砕してくれなければ困ると考えた陸軍は、帰還した兵士を密かにある寄宿所に幽閉し、世間に知られないようにしました。
彼ら若き特攻兵士は、自分の意思(玉砕する)に反して、機体の故障で帰還したのに、卑怯者扱いされ、延々とリンチを加えられたのです。
特攻基地まで自ら出向き、飛び立つ特攻隊員と水杯を交わしながら、「お前達だけを死なせはしない、俺もすぐに後を追うから。」と無理やりに作戦を敢行した司令官が、戦後も生き残こり、結局94歳で往生したという笑えないオチまで紹介されていました。
軍の上層部が兵隊をコマにしか扱わないその非道さと、自分達の組織(決して国家や国民、おそらく天皇陛下の為でもない官僚組織)の面子や体裁ばかりを問題にする様子が胸に突き刺さります。
事の良し悪しは別に置いて、先の戦争は、日本の為、国益の為に遂行されたのではなかったのでしょうか?
それが、所期の目的や大儀から脱線し、軍隊という官僚組織が暴走したのです。
自分達独自の面子や秩序を国民に押し付け、国の為と言いながら未来の国家を支えるはずの前途有為な若者の命を無為に散らせて行ったのです。そして、その深いところには、彼らだけの利得、組織の利益が横たわっていました。
国民は正しい情報を殆んど何も知らされず、悲惨な思いをし、大切なものをなくし続けたのです。
ここまで述べて、大抵の人は気付くと思います。
そうです。この手の話は、事の残酷さ悲惨さを差し引けば、今も私達の周りで問題になっていることです。
日本という社会は、昔も今も本質は変わっていないなあと暗澹たる気持ちにさせられます。
何とか行政単位の論理が国全体の論理を下から突き破ってしまわないように、国民も余程気を付けないといけないと思います。
昔のことが昔にとどまらないところに、歴史の残酷さがあるように感じました。
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