第47話 葛飾北斎に人生の円熟味を学ぶ
北斎は日本人なら誰でも知っている、美術界のビッグネームです。しかし『富嶽三十六景』や美人画以外にどういう人生を生き、どういう作風を辿っていったのかについてはいま一つ理解できていませんでした。
今回幸いなことに上京した折に、上野の東京国立博物館で『北斎展』が開催されていたので足を向けてみました。
期間中約500作品が展示されるそうで、途中で一部が入れ替えるといっても300作品の展示。大混雑の中、短時間で全てを見るのは至難の技で、駆け足の鑑賞となりました。
北斎は1760年(宝暦10年)から1849年(嘉永2年)の90歳の生涯を生き、そのうち約70年間が現役だったという偉大な画家です。
その生涯を大きく6期に分けて展示されていました。
最初は、勝川春章に弟子入りしていた頃の勝川春朗時代。これが20歳からの約15年間。
次が俵屋宗理(そうり)時代。そして北斎期、画号を戴斗(たいと)に改めた戴斗期、錦絵にもっとも傾注した為一(いいつ)期、そして75歳からの最晩年北斎自らが画狂老人卍期と表した期間の6つです。
実際鑑賞した感激を文章にするのは簡単なことではありません。しかし、会場に入って、ひとたび絵に見入ると、確かに200年の時間を越えて北斎の息吹を感じることができました。
時代が大きく違っても、『粋さ』や『美意識』は現代の私達にもそのまま通じるものです。
江戸時代の庶民生活や風物に興味を持つ身にとって、短い時間なりに感動することが多々ありました。
春朗期は若さがほとばしり、いろいろな技術も積極的に取り入れています。驚いたことに西洋の遠近法も多く使われています。西洋的な立体感で描かれた江戸時代の風物はリアリティが高まってずっと身近に感じました。
若さが直線的な美への探究に繋がり、ある種のメルヘンを描いているようにも映ります。
そんな作風が年齢と共に大きく変化していきます。
人間は、どんなに一徹に道を貫いているように見える人でも、長い人生の間には興味や感じるところが大きく変遷していくもののようです。
気付きがあったり、悟りがあったり、出会いがあったり、それに人間としての成長や円熟味が加味されて明らかに芸術的な深みや大きさが増していきます。
美人画にしても描かれる女性の艶やかさや人間性が増していく様がよくわかります。風景画や花鳥画は構図や描かれるものへの洞察力の深み厚みが違っていきます。
北斎ほどの人でも、様々なことに興味を持ってチャレンジし続けていたことを知ったことは大きな刺激になります。そしてその結果、晩年は自らの境地を悟り、逆にそこに注力していきました。特に肉筆画ではそれが良く表れています。
ともかくも最後の最後まで成長、成熟を続けたことは本当に敬服に値します。
また同時に、人間は死ぬまで成長できるのだという大きな希望を与えてもらえすがすがしい気持ちになりました。
北斎展は、12月4日までです。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56554/7141383
この記事へのトラックバック一覧です: 第47話 葛飾北斎に人生の円熟味を学ぶ:







コメント