第46話 『日本も捨てたものじゃない』という話
何がどう変わったからなのか、一般庶民としては実感が湧かないまま、日本の政治経済は好転しているそうである。
確か2年半前の平成15年3月(平成14年度末)には、日本国が下手をすると破産するというような風評がまことしやかに飛び交っていた。
私は、日本人の最大の特性は(これは裏返せば最大の弱点でもあるが)忘れっぽいところにあると思っている。 節操無く忘れ又切り替えられるところが、また良い。
中国とアメリカの景気に牽引されて、株価も回復した。とか、小泉政権が圧勝して、構造改革路線が定着した。とか、好景気に転じた理由はいろいろ解説されているが、どれも後講釈的な感じがしないでもない。
それより、私は日本人の他意の無い無邪気さが、随所で救いになってきたと考えている。
良くも悪くも平和的(平和ボケ?)で『ノー天気』な我が民族は、難しく考えない分、切り替えも早い。そして何より自分達の持っている能力(潜在力も含めて)に対しても奥ゆかしいまでに謙遜で、それでいて深い所ではちゃんと分かっている(だからのん気でいられる?!)。
先日、川崎にある日本ゼオンという会社の研究所を取締役の田中公章氏の計らいで、見学させていただいた。
日本ゼオン株式会社は、車のタイヤに使う合成ゴムをはじめとし、いろいろな種類の樹脂やプラスティック等を開発・製造している会社である(難しい言葉では高分子化学というそうだ)。
今や皆が使っている写真機付携帯電話に内蔵しているレンズ(何とガラスではなくプラスティックだそうだ)の大方をほぼ独占的に製造しているなど、高度で独創的な技術力で昨今も業績を大きく拡大させている優良企業である。
研究所を案内していただくと、製造されたプラスティックや樹脂などの品質を分子構造のレベルでチェックできる見たことも無い機械が所狭しと並んでいた。詳細は書き切れないが、一通り見学させてもらって残った印象は、「何という精度で製造しているのか!!」というものであった。
滅多に工場や研究所を見学することはないので、推測でしか言えないが、日本ゼオンに限らず、日本では大企業だけでなく多くの中小企業でも、卓越した技術力や特許(知的財産)を誇っているようだ。
成長著しい中国であっても、日本の現在の技術レベルに到達するのは生易しいことではないことが良く分かる。
機械やコンピューターといったハイテクの面が良くクローズアップされるが、実は最大の強みは人にある。普通の工員(場合によっては、長年働いているパートのおばちゃんということもある)が、とんでもない技(わざ)を持っているところに日本のモノ作りの奥深さがある。これが、他の国では真似ができない日本の強みであり、誇りである。
一般市民が殆んど触れることも、知ることもない領域で、日本は営々と知的な財産を蓄積しており、分厚い人材と併せて、他の追随を許さないレベルに至っている。
『失われた10年』と呼ばれて浮き足立っていた期間中も途絶えることなく、企業は研鑽を積んできた。
確かに、この十数年、政治や金融システムなどで日本は劣勢に追い込まれたが、根本をなす潜在力では、世界から一目置かれている事には変化がない。
日本全体が、得体の知れない『鬱病』から回復して元気を取り戻していけば、「日本もまんざら捨てたものじゃない。」と感じる国民が多くなっていくだろう。
後は、不得手な政治経済のグランドデザイン作りが上達すれば、未来に希望を抱けるようになるはずだ。
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